出張の残業代は出る?移動時間や休日の扱い、正しい計算方法を解説
出張の残業代の扱い方について悩むビジネスマンも多いでしょう。本記事では、出張時の残業代が出るケースや残業代の計算方法、休日・深夜の扱いや日当との違いなどを詳しく解説します。正しく運用し社内のトラブルを防ぐためにも、この記事を参考にしてください。
出張中に残業代は支払われる?
出張中であっても、法定労働時間を超えて実労働を行った場合には残業代が発生します。商談や資料作成など、使用者の指示に基づいた業務に従事している時間が支払対象です。
一方で、移動時間は原則として自由利用が保障されているため、労働時間には含まれないとされています。ただし、使用者の指揮命令下にあると判断される特殊な移動は、例外的に労働時間へ加算される仕組みです。
出張手当(日当)があるからといって残業代を補えるわけではないため、自社の規程を明確に確認しておきましょう。
出張の日当(出張手当)と残業代の違い
出張の日当は食事や雑費を補う実費弁償的な経費であり、労働の対価である賃金とは性質が異なります。そのため、日当の支給があるからといって法定残業代の支払いは免除されません。両者を混同すると税務・労務上のリスクを招くため、明確に区別した運用と仕訳が求められます。
日当は通常必要と認められる範囲で支給される場合、原則として給与課税の対象外となるため、労働の対価である残業代とは経理上の扱いも異なると理解しておきましょう。
| 日当(出張手当) | 残業代 | |
| 目的 | 食費や雑費など、出張に伴う自己負担(実費)の補填 | 時間外労働に対する割増賃金 |
| 支払義務 | 法律上の義務はなく、社内規定による | 法律(労働基準法)に基づく支払い義務あり |
| 課税対象(所得税) | 原則として非課税(適正な額の場合) | 課税対象(給与所得に含まれる) |
| 社会保険料の計算 | 原則として算定基礎に含まれない | 算定基礎(報酬)に含まれる |
出張の移動時間が残業代支払いの対象になるケース

出張の移動時間は、通常のオフィスへの通勤と同様に、労働者が自由に過ごせる時間とみなすのが原則です。そのため、基本的には通勤時間と同じ扱いをすることになります。
しかし、移動中であっても会社から仕事内容の指示や管理を受けている場合は、労働時間として認識されることがあります。明確な指揮命令下の移動と認められれば、残業代支払いの対象となる可能性があるでしょう。
出張の移動時間が残業代の対象になり得る具体的なケースは以下のとおりです。
- 物品の運搬や監視を命じられているケース
- 具体的な業務の指示を受けているケース
- 会社が移動ルートを指定し、かつ自由利用を制限しているケース
たとえば、厳重な管理を要する物品の運搬など、業務上の義務を伴う移動は労働時間に該当する場合が考えられます。移動中に資料作成や打ち合わせを指示された時間も同様です。また、移動ルートが指定されているだけでなく、移動中の行動が厳密に制限されている場合は、指揮命令の範囲内とみなされるケースがあります。
出張が休日や深夜に及ぶ場合の残業代の扱いと計算方法

出張中の業務が休日や深夜にわたる際は、それらが労働時間に該当するかを確認することが重要です。具体的な業務指示がある時間については、労働基準法に基づいた割増賃金が支払われます。深夜や休日に行う労働には、法令で定義された適切な割増率を適用しなければなりません。
出張中の残業代計算に用いる基本的な割増率は以下の通りです。なお、1か月60時間を超える時間外労働は、原則として50%以上の割増率が適用されます。
| 区分 | 割増賃金率 | 適用される時間帯・条件 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 25%以上 | 1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えた場合 |
| 深夜労働 | 25%以上 | 午後10時から午前5時までの間に労働させた場合 |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 法定休日に労働させた場合(時間外割増は重複しない) |
休日に移動のみを行う場合
休日に移動のみを行う時間は、原則として労働時間に含まれません。ただし、移動中に具体的な業務指示を受けたり、自由な利用が制限されたりする場合は、労働時間とみなされることがあります。
のちのトラブルを避けるためにも、休日移動の取り扱いを社内規程であらかじめ定義し、不明確な点は事前に会社へ確認しておくと安心です。
休日に出張先で業務を行う場合
法定休日に出張先で業務を行う場合は、法定休日労働に該当します。展示会への対応や緊急の業務などは、規定の割増賃金を支払う必要があるでしょう。
休日労働の未払いはコンプライアンス違反を招くため、十分な注意が求められます。事前の計画立案と正確な実績記録を行い、社員間で誤解が生じない体制を整えることが大切です。
出張先で深夜まで業務を行う場合
午後10時から翌午前5時までの業務には、深夜労働としての割増賃金が発生します。出張先で深夜まで業務を行った場合、使用者の指示があれば通常勤務と同様に適正な処理が必要です。
深夜の長時間労働は健康への影響も懸念されるため、休息への配慮も欠かせません。出張中であっても、深夜業の割増ルールは一律に適用されます。
「事業場外みなし労働時間制」でも残業代が出るケース
事業場外みなし労働時間制とは、出張などで正確な時間把握が難しい場合に、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす制度です。しかし、業務遂行に通常必要とされる時間が法定労働時間を超える場合などは、残業代が発生します。
指示が具体的で随時連絡が可能な場合や、複数名で行動し時間管理者がいる場合は対象外となり、実時間での計算が必要です。また、休日や深夜の労働分はみなし制度下であっても別途支給対象となります。
出張の残業代に関するトラブルを防ぐための管理方法

出張時の労務管理は曖昧になりやすく、適切な対策を講じなければ未払い残業代などのトラブルに発展しかねません。従業員の不満を解消し、コンプライアンスを遵守するための具体的な管理手法を確認しましょう。
出張時の残業代支払いに関する社内ルールを定める
出張時の残業代計算基準を明確に定めることは、労務トラブルの未然防止につながります。労働時間の判定が曖昧な状態は、不透明な運用や従業員の不満を招く原因となるため注意が必要です。
指揮命令下にある移動や深夜作業の判断基準を社内規程として明記し、全社へ周知することで運用の透明性と公平性を担保しましょう。
一元管理システムを導入して精算業務を透明化する
出張の勤怠や経路を一元管理できるシステムを導入すれば、属人的な運用方法の改善につながります。システム上で申請から承認まで完結させることで、計算ミスや不正を未然に防ぐ効果が期待できるでしょう。
経費と労働時間を統合して管理すれば精算業務の透明性が向上し、自動化による工数削減は会社全体の生産性向上にも貢献します。
出張の残業代に関するよくある質問
出張中の労働環境は通常とは異なるため、残業代の扱いに悩む方も少なくありません。ここでは、多くの人が疑問に感じやすいポイントをQ&A形式で紹介します。
Q.出張先から自宅へ直帰する時間は残業代の対象になる?
A. 原則として労働時間には含まれないため、残業代の対象外となります。
出張先から自宅への移動は、通常の通勤と同様に場所的拘束を受けない自由な時間とみなされます。ただし、移動中に具体的な業務を命じられたり、物品の運搬や緊急対応といった義務を伴ったりする場合は例外です。直帰の際、残業代が出るかどうかは、業務指示があったかにより判断されることになります。
Q.海外出張の場合も日本の労働基準法に基づく残業代が支払われる?
A. 原則として、海外出張であっても日本の労働基準法が適用されます。
日本の企業に雇用されている場合、海外での業務も国内と同様のルールで管理されるのが一般的です。時差や長距離移動など特殊な勤務形態であっても、適切な勤怠管理を行わなければなりません。
ただし、海外での業務が国内事業場の指揮命令下にあるか、現地法人など海外の事業場の指揮命令下にあるかによって扱いが変わることもため、勤務実態に応じた確認が必要です。
Q.出張の移動中に寝ていたり読書をしていたりしても残業代は出る?
A. 業務の指示がなく自由に過ごせる状態であれば、労働時間とは認められません。
移動中に睡眠や読書ができるのは、会社による自由利用が保障されている証拠であり、この時間に残業代は発生しません。ただし、仕事に関連する待機指示や、移動中の具体的な作業命令がある場合は労働時間として扱われます。移動時間中の過ごし方が自由利用に当たるのか、使用者の指揮命令下での業務に当たるのかを正しく理解しておきましょう。
Q.出張中の懇親会や会食への参加時間は残業代を請求できる?
A. 一般的な会食は労働時間に含まれませんが、参加が義務付けられている場合は対象となります。
懇親会や会食は任意参加が原則であり、基本的には労働時間に含まれないとされています。しかし、上司から参加を強制されたり、接待や商談など実質的な業務が伴ったりする場合は労働とみなされる可能性が高いでしょう。トラブルを防ぐためには、その会合が「任意」なのか「義務」なのかを事前に明確にしておく必要があります。
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出張時の適切な労務管理を行おう
出張中の残業代は、移動時間の扱いや「みなし労働」の解釈によって判断が分かれます。原則として移動時間は自由利用が認められるため労働時間には含まれませんが、業務指示がある場合や深夜・休日の実労働には適切な割増賃金の支払いが必要です。トラブルを未然に防ぐには、社内規程を明確にするほか、勤務記録を客観的に行える仕組みが欠かせません。
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